シューベルト晩年の歌曲集《白鳥の歌》を、通常の順番ではなく、詩人や情感の流れに沿って再構成し、ひとつの“内なる物語”としてプレガルディエンが描き出します。前半はレルシュタープの7曲を軸に、《憂い》《秋》《それらがここにいたことは 》などを挿入。外面的な明るさと内面的な悲嘆という相反する感情が交差する世界が浮かび上がります。冒頭の《憂い》では、歌うことそのものが感情を隠す行為となり、《別れ》や《セレナーデ》では愛の喜びと未練が同時に響きます。《遠い国で》《わが住処》では幸福の記憶が遠ざかり、さすらいの孤独が深まり、第1部は《春の憧れ》の光の中で静かに結ばれます。第2部はシュルツェの内省的な詩から始まり、やがてハイネの世界へ。甘美さと皮肉、愛と毒、夢と幻影という矛盾を抱えた詩が、人間の心の深層を照らします。この独自の配列によって、《白鳥の歌》は単なる歌曲集ではなく、愛と記憶、孤独と幻影をめぐる精神の旅として立ち上がります。声が少しずつ世界から離れ、内面へと沈み込んでいくその軌跡を、ぜひ会場で体験してください。それはシューベルトが残した最後の歌であり、人間の心がたどる物語かもしれません。
今回、ぜひ会場で体験していただきたいのが、1818年にウィーンでナネッテ・シュトライヒャーによって製作されたフォルテピアノです。現存する楽器はごくわずかで、この時代のフォルテピアノの“生の音色”に触れたことのある人は、ほとんどいません。透明なニュアンスの繊細さと、思いがけないほど豊かな響き。この楽器は、ベートーヴェンを大いに喜ばせ、数々の名作を生み出す原動力になったとも伝えられています。およそ200年前、ウィーンのサロンに響いていた音。その響きが、いま再びよみがえります。歌の心情に寄り添いながら、時代の空気まで伝えてくれるこの希少な楽器の音色を、ぜひ会場で体感してください。https://www.tokyo-harusai.com/harusai_journal/20260305/



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